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俳句の庭

  • 踏青や水の小声に耳応へ

    6月 6th, 2026

    「踏青(とうせい)」は春先に萌え出たばかりの若草を踏みながら、野山を散策したりピクニックを楽しんだりすること。中国の古い風習が奈良時代に日本へ伝わったもの。「青き踏む」ともいう。

    掲句は、草が萌え出た野を歩き回りながら、小さな水音に耳を澄ませているところを詠んだ。凍てが緩んでくると、真っ先に生き生きとしてくるのが水である。近くを流れる小川のせせらぎ、草木を落ちる雫の音その他小さな水の声が、野のあちこちから聞こえてくる。春が動き出したことを感じるのはそんな時だ。令和8年作。

  • 雀の子

    6月 5th, 2026

    春に生まれて巣立ちをしたばかりの、まだあどけなく飛ぶのもおぼつかない雀のヒナのこと。雀はスズメ科の野鳥であり、全国に留鳥として広く生息する。住宅の隙間など人の生活圏に巣を作ることが多い。「雀の子」の巣立ちのピークは5月下旬から6月頃だが、晩春の頃から巣立ちがはじまることから春の季語になっている。

  • 青嵐(あおあらし)

    6月 5th, 2026

    青葉が茂る頃に吹き渡るやや強い風のこと。晴れた日に木立をザワザワと揺らすような、若々しく清々しい風である。青々と茂る草木の生命力と、草木を吹き抜ける風の力強さ、爽快感が混然一体になった言葉。

  • 廣瀬直人の俳句(53)

    6月 5th, 2026

    熟葡萄濃きともしびと隔らず 直人

    「葡萄(ぶどう)」は、初夏の頃黄緑色の地味な小花をつけた後、8月から10月にかけて実が熟す。

    掲句は、作者の身辺にある葡萄畑の実りの様を詠んだ作品。詠まれているのは「熟葡萄(うれぶどう)」と「濃きともしび」であり、作者の居宅或いは近隣の家々から洩れる「濃きともしび」からそう遠くないところに葡萄棚があり、熟れて収穫の時を迎えているのだ。灯に浮び出ている「熟葡萄」は、巨峰のように黒々と熟れた大粒の葡萄だろう。手塩に掛けてきた果樹が実りの季を迎えた充実感が伝わってくる。極度の省略と単純化が、作品の味わいと純度を深めている。昭和47年作。『日の鳥』所収。

  • 野晒しの客車一輛行々子

    6月 4th, 2026

    「行々子(ぎょうぎょうし)」は葭切(よしきり)の異名。川辺の葦(よし)の茂みにとまり、暑い最中にギョギョシ、ギョギョシとけたたましく鳴く。

    掲句には、「青森 四句」との前書きを付けた。青森に出張した際に、朝の散歩の時に目にした光景が契機になっている。駅前のビジネスホテルから歩いてすぐのところに、かつて青函連絡船に貨車や旅客を繋ぐために使用されていた線路や客車などが、使用されなくなった後も草叢の中に残されていた。その日の暑さを予告するかのように、「行々子」が朝から頻りに鳴いていた。平成19年作。『春霙』所収。

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