春といっても名ばかりだった2月より、春らしさが増してくる。ようやく気温も上がり始め、木々の芽吹きが始まり、ちらほらと花が咲き始める。雲は柔らかく、白く、眩いばかり。鶯や四十雀、頬白の囀りが聞かれるのもこの頃から。雛祭、お彼岸などの行事を経ながら季節が進んでいく。年度替わりに当たり、卒業式や人事異動などがあって慌ただしい月でもある。

春といっても名ばかりだった2月より、春らしさが増してくる。ようやく気温も上がり始め、木々の芽吹きが始まり、ちらほらと花が咲き始める。雲は柔らかく、白く、眩いばかり。鶯や四十雀、頬白の囀りが聞かれるのもこの頃から。雛祭、お彼岸などの行事を経ながら季節が進んでいく。年度替わりに当たり、卒業式や人事異動などがあって慌ただしい月でもある。

「桜貝」はニッコウガイ科の二枚貝。殻は薄く桜色で光沢がある。砂浜に打ち上げられているのを、拾って楽しむ。
掲句は、砂浜で桜貝を拾うという無償の愉しみと「小さな嘘」とを取り合わせた作品。だが、「小さな嘘」がどのような嘘なのか、作品には何の説明もない。いずれにしても、桜貝を拾っている作者自身の、或いは砂浜をともに歩いている年端の行かない子供などがついた他愛のない嘘なのだ。砂浜を歩いている二人を、穏やかな春の日差しが降り注いでいることだろう。「小さな嘘」という言葉のもつ可憐で微妙なひびきが、読者の想像を刺激する作品だ。『俳句界』2024年3月号。
ツバキ科の常緑高木。北海道を除く全土に自生し、沿海地や山地に自生するヤブツバキ、日本海側の多雪地帯に自生するユキツバキなどがある。観賞用の園芸品種も多い。2~4月にかけて、つやつやした肉厚の葉の中に真紅の花を咲かせる。園芸種には白や斑入りの花もある。落花は、花びらが散るのではなく、一花がそのままぽとりと落ちる。種子からは油を製し、堅牢な材は農具や楽器に用いられる。

「雛流し」は、雛を海や川に流すことによって、災厄を払うこと。古雛や紙製の雛などに穢れを移す祓いの行事。
掲句は、新年早々に生起した能登半島大地震や去年の各地の水害などを念頭に読みたい作品。これらの災禍の数々は、日本列島が受けた「深傷(ふかで)」といえるだろう。雛流しには、そうした災厄を払う意味合いがある。災禍の途切れることのないこの世の在りようを、大きく捉えた一句。『俳句界』2024年3月号。