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俳句の庭

  • ただそこに居るだけで母冬ぬくし 大谷弘至

    12月 21st, 2024

    「冬暖(ふゆあたたか)」「冬ぬくし」は、本来寒いはずの冬の暖かい日のこと。身構えている心と身体をほっとさせる。

    掲句は年老いた母を詠んだ作品。以前は何くれとなく息子や娘の世話を焼いてきた母も、齢を重ねるにつれて子供たちに労われるようになり、母自身の身の回りのことも、次第にできなくなっていく。「ただそこに居るだけで母」という措辞は、そのような老母の姿を彷彿させる。「冬ぬくし」の季語が限りなく優しく作者の母への思いを包み込んでいる。『俳句四季』2025年1月号。

  • 麦の芽

    12月 21st, 2024

    晩秋初冬に蒔かれたコムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギなどの麦は、間もなく芽を出し、しだいに寒さが厳しくなる中、少しずつ芽を伸ばしていく。冬枯れの中、延々と広がる麦の芽の瑞々しい緑は心を和ませる。なお、春先、麦の若葉が出揃い穂が出るまでの間の麦を「青麦」といい春の季語。

  • 寒蜆(かんしじみ)

    12月 21st, 2024

    蜆はシジミ科の二枚貝。一年中、淡水や汽水で採取できる身近な小貝で、単に蜆といえば春季、夏の土用の頃の「土用蜆」は夏季、寒中の「寒蜆」は冬季に分類される。秋の産卵期を経て栄養が回復してきた「寒蜆」は特に薬効があるとされる。蜆には、河川で獲れる淡水産の「マシジミ」、琵琶湖特産の「セタシジミ」、海水と淡水が入り混じる汽水域に棲む「ヤマトシジミ」の3種類があるが、今は「ヤマトシジミ」が主流。

  • 龍太の句を拾う(12)

    12月 20th, 2024

    春の蟬村びと溶けむばかりなり 龍太

    「雲母」昭和63年8月号。

    「春の蟬」は蟬の中で最も早く鳴き出す蟬のこと。晩春の頃から山の松林などで鳴き出す。夏の季語である松蟬と同じ蟬であるが、鳴き出す時期をとらえて春蟬とよぶ。日を浴びて遠近に湧き上がるその声には、春の柔らかい情感がある。

    掲句は春の蟬が鳴く好天のもと、畑に出たり道を通り過ぎたりする村びとの姿が、地に溶けんばかりに見えるとの句意。季節の推移に随順するような柔らかい春蟬の声は、この句の情景によく合っている。龍太自身も、村びとの一人としてこの地に溶けんばかりにして暮らしている。この時の作者の脳裏には、〈ふるさとの土に溶けゆく花曇 甲子雄〉の作があっただろう。掲句を句集に収めなかったのは、村びとが「溶ける」との把握の独自性に一抹の疑念があったからかも知れない。

  • 眼抜(めぬけ)

    12月 19th, 2024

    フサカサゴ科に属する深海性の海魚。体色は赤みを帯びる。荒神眼抜、珊瑚眼抜などの種類がある。深海に生息するため、釣り上げると水圧の変化で眼がとびだすことからこの名がついたという。繁殖期を迎える12~4月が漁期。煮物などにする。

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