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俳句の庭

  • 命減らす新暦なり吊りにけり 今瀬剛一

    12月 30th, 2024

    昔からの暦には伊勢神宮の伊勢暦、江戸の江戸暦など各地に特色あるものがあり、最近では企業や各種団体が作る美しい絵や趣向を凝らしたカレンダーなどがある。「新暦」「初暦」はこれらを新年に使い始めること。新しい年への期待感が膨らむ。

    掲句は、新年に使い始める「新暦」を「命減らす」と表現し、新年の期待感や華やぎよりも、残生(ざんせい)に対する深沈たる重いに誘う作品だ。この句の「新暦」はモダンなカレンダーよりも、一枚一枚剝いでゆく日めくりの暦が相応しい。一日ごとに一枚ずつ剝いでゆくので暦は次第に薄くなっていく。「命減らす」はある程度の老境に達した人のもつ、暦に対する率直な感慨だろう。暦が薄くなっていくとともに、自らの残りの命の日数も減っていくのだ。そこには、今生の一日一日を愛惜する思いも滲む。『俳句界』2025年1月号。

  • 冬の苺

    12月 30th, 2024

    冬に店頭に並ぶ温室栽培の苺。露地物の苺の旬は初夏だが、品種改良やハウス栽培の技術が向上し、クリスマス需要に合わせて本来の旬よりも早い冬に食べられる苺が増えた。単に「苺」といえば夏の季語。なお、俳句で「冬苺」といえば山野に自生するバラ科キイチゴ属の常緑小低木のこと。冬に小さな赤い実が熟し、食べられる。以上のように「冬苺」と「冬の苺」とは全く別のものを指すので注意が必要だ。「冬の苺」も、季語として十分に熟していない憾みがある。

  • 冬鷺(ふゆさぎ)

    12月 30th, 2024

    冬に見かける鷺のことで、主として留鳥のコサギ、アオサギ、ダイサギなど。冬季においても、水田や河川等の水辺で主に魚類等を捕食して、水辺付近の環境に生息している。一方、サギ科のチュウサギ、アマサギなどは夏鳥として本州以南に渡来し、冬季は越冬のため沖縄以南の地域に南下する。これら渡りをする鷺のうち怪我をするなどして冬も南方に帰れなかった鷺を「残り鷺」という。

    下の写真は群れで生活するコサギ。

  • 雪雪雪雪をかさねて夜の軋む 國田欽也

    12月 29th, 2024

    「雪」は春の花、秋の月と並んで冬の美を代表する。たまに降る少量の雪は風情があっていいものだが、雪国と呼ばれる日本海沿岸の豪雪地帯では、雪は白魔と恐れられる気象現象。

    掲句は「雪」の語を重ねて、いつまでも降り続ける雪を字面(じづら)の上で視覚的に表現した作品。降り続ける雪の重みに耐えかねて夜闇が軋むのではないかというのだ。雪が降り続ける不安は、夜の明け白むまで作者の心を圧迫し続ける。『俳句界』2025年1月号。

  • 鰆(さわら)についての一考察

    12月 29th, 2024

    サバ科の回遊魚。体長は1メートルほどで、体色は銀灰色。出世魚で、関東では50センチくらいまでの大きさを「サゴシ」「サコチ」、50センチを超えると「サワラ」と呼ぶ。一方、関西では50センチ前後は「サゴチ」「ヤナギ」、70センチを超えたものを「サワラ」と呼ぶ。年間を通して日本沿岸で漁獲があるが、晩春・初夏の頃産卵のために瀬戸内海に回遊してくるため、春の季語に分類されている。ただし関東では、脂がのった産卵前の寒鰆が賞味される。

    上記のように、鰆は晩春・初夏に産卵のため瀬戸内海に集まり、漁獲量が増えるため、関西では春が旬と認識されてきた。関西では、刺身や西京焼きが好まれ、冠婚葬祭や懐石料理に用いられるなど、身近な魚として浸透している。そのため、歳時記でも春の季語とされている。現在までの歳時記が、関西人の認識や生活感覚を核にして編纂されていることを改めて認識させられる一例だろう。脂ののった冬の鰆については、歳時記には掲載されていないが、「寒鰆(かんさわら)」として詠むのも一法だと思う。

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