「袋掛」は、林檎、梨、桃、枇杷などの栽培で、果実を鳥や病虫害から守り、外観を美しく保つため、紙の袋を掛けること。摘果の後、実の一つ一つに袋を掛けるのは、根気の要る作業だ。
掲句は、山梨県勝沼の葡萄畑での作品。行けども行けども左右は葡萄棚で、棚の奥の方で夫婦らしい二人が黙々と袋掛けをしていた。青々とした葡萄の葉を零れてくる日が、作業をしている人の肩や腰に差して揺らめいていた。平成20年作。『春霙』所収。
「袋掛」は、林檎、梨、桃、枇杷などの栽培で、果実を鳥や病虫害から守り、外観を美しく保つため、紙の袋を掛けること。摘果の後、実の一つ一つに袋を掛けるのは、根気の要る作業だ。
掲句は、山梨県勝沼の葡萄畑での作品。行けども行けども左右は葡萄棚で、棚の奥の方で夫婦らしい二人が黙々と袋掛けをしていた。青々とした葡萄の葉を零れてくる日が、作業をしている人の肩や腰に差して揺らめいていた。平成20年作。『春霙』所収。
「茄子」は、インド原産のナス科一年生の野菜。どんな食材と取り合わせても順応する癖のない味わいとなめらかな食感が特徴で、煮物、焼茄子、天ぷら、炒め物、漬物など様々な調理法がある。最もポピュラーな夏野菜の一つ。
茄子には、紫紺色だけでなく白や緑のものもあるが、掲句からは、畑に栽培されている紫紺色の茄子を想像して欲しい。日暮れどきの茄子畑の辺に佇んでいて、自らの来し方・行く末を漠然と思っていた。既に人生の中盤を過ぎようとしているとの思いもあった。平成18年作。『春霙』所収。
蛾の多くは夜行性で、夏の夜の灯火を飛び回るので、「火蛾」「火取虫」などと呼ばれる。日本に生息するチョウ目の昆虫6000種のうち、「チョウ」と呼ばれるものは250種類で、他はすべて「ガ」であるという。「火蛾」といえば、速水御舟の日本画『炎舞』に描かれている、炎とともに舞い狂う蛾の姿が思い浮かぶ。
掲句は、山中の旅館の窓越しに見た「火蛾」が契機になってできた作品。その日は生憎の雨で、窓を打ったり、じっと張り付いたりしている蛾の後ろに、深々と山国の闇が下りてきていた。平成5年作。『河岸段丘』所収。
「夜鷹」はヨタカ科の夏鳥で、春、繁殖のために日本の平地から低山の雑木林、草原などに飛来する。姿は鷹に似ているが猛禽類ではない。夏の夜にキョキョキョキョと続けて啼くのは雄。
掲句は牧場を囲む木立の中で、夜、佇んでいた時の作品。牧場といっても酪農の衰退で牛などはおらず、夜になると都会では考えられないような深い闇が辺りを占めた。時折雲間から、月の光が地上にこぼれた。後日、その辺りを夜出歩くと、熊が出没するかも知れないと教えてくれた人がいた。平成8年作。『河岸段丘』所収。
「明易し」は「短夜」の傍題で、夏の夜が短く、忽ち明けかかることをいう。
掲句は、近くの公園の池での早朝の嘱目。カルガモが一羽の雛鳥を従えて泳ぎ回っていた。数日前は二、三羽の雛を従えていたのが、鴉に襲われたのか、たった一羽になってしまったのだ。最後の一羽だけはどうか無事に育って欲しいと心の中で念じながら、暫くそこに佇んだ。「明易き」との季語の選択に、この世で限りある生を営む者同士の共感の思いが、投影しているのかも知れない。平成11年作。『河岸段丘』より。