「栗」はブナ科の落葉高木の実で、棘のある毬(いが)の中で育ち、成熟すると毬が裂けて実がこぼれ落ちる。鬼皮、渋皮を剥いたあと茹でるなどして食する。
掲句は、栗を剝いている自分自身に目を向けた作品。台所俳句といってもいいが、作者の目は厨房よりも、自らの内面に向けられている。自分自身にないものを求めて彷徨うのが人の一生ともいえ、「私以外の私になれず」との認識は、当然のようにも見えるが、中々到りつけない境地。人生の厳然たる真実でもある。栗を剥くという日常の営みが、作者の思いを支えている。『俳壇』2025年12月号。