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俳句の庭

  • 明易き空也絵伝のされかうべ

    6月 4th, 2023

    「明易し」は「短夜」の傍題。夏の夜の短さを惜しむ心に重きが置かれている季題だ。夜が明け白んでくる安堵感と名残惜しさが入り交じる。夜が明けても、心はゆらゆらと夜と朝の間を漂う。

    掲句は、美術館に展示されていた空也上人絵伝が契機になってできた作品。空也上人(903~972)は、日本で初めて称名念仏を実践した高僧。絵伝は、その生涯を、連続する絵と詞書によって示したもの。野ざらしの髑髏を供養する空也上人の姿を描いた絵もその中にあった。人の一生の儚さということを、不意に突き付けられたような気がした。平成14年作。『河岸段丘』所収。

  • 泰山木の花

    6月 4th, 2023

    北アメリカ原産のモクレン科の常緑高木で、高さ20メートルに達することもある。日本に渡来したのは明治時代初期で、新宿御苑に植えられたのが始まりとされる。6、7月頃、蓮に似た白色碗状の花が上向きに咲き、強い芳香を放つ。高木なので、遠くから目につくが、近づくと花は木叢に遮られてしまう。花の白色と、光沢のある葉の深緑色との対比は美しい。

  • 朧夜のふちに不覚の段差あり 仁平勝

    6月 3rd, 2023

    朧は、春の夜、湿り気を含んであたたかく和んだ夜気の中で、ものの輪郭や音や色がやわらかく模糊としていること。朧夜の気配は、戸外だけでなく、夜気の入り込む家の中でも感じ取れるだろう。

    掲句は、朧夜を歩いていて、思わぬところに段差があり、思わず躓きそうになったとの句意。戸外の公園などを歩いている場面でもいいが、私は、夜中にトイレに起った場面を想像した。躓きそうになった段差が、朧夜のふち(縁)にあるとの把握が面白い。日常誰もが経験する内容だが、季語「朧」が効いている。『俳句』2023年6月号。

  • 水攻めの名残の起伏行々子

    6月 3rd, 2023

    行々子(ぎょうぎょうし)は葭切のこと。初夏に日本各地の川原や湖沼などの葦原に飛来し、繁殖期の間、オスはギョッギョッと騒がしく囀る。関東平野でもよく見かける鳥だ。

    掲句は、戦国時代に水攻めが行われた忍城(おしじょう)跡での作品。城の水攻めといえば、備中高松城が有名だが、豊臣秀吉の小田原征伐に際して行われた忍城の水攻めも、知る人ぞ知る戦国時代の事跡だ。忍城は豊臣方の水攻めには耐え抜いたが、明治時代には廃城となり、土塁の一部を残して取り壊された。現在は公園となり、外堀や土塁の一部が当時の地形をとどめているに過ぎない。折から辺りの葦原で、暑苦しい声で葭切がしきりに鳴いていた。平成16年作。『河岸段丘』所収。

  • 珊瑚樹の花

    6月 3rd, 2023

    珊瑚樹(さんごじゅ)はスイカズラ科の常緑高木。暖地の海岸近くの山野に自生し、庭木、生け垣、防風・防火樹としても利用される。6~7月、枝先に円錐花序を出し白い多数の筒状の花を泡立つように咲かせる。10月頃に熟す赤い実が珊瑚に似ているので、この名がある。

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