くつきりと一会ありけり鳥雲に 直人
「鳥雲に」は「鳥雲に入る」ともいい、日本を離れて北へ帰る雁などの渡り鳥が、雲の彼方へ消えていくこと。去りゆく鳥への名残惜しさに加え、季節の移り変わりや別れを惜しむ心情が含まれる言葉。
掲句には、「悼 桂信子氏」との前書きがあり、2004年12月に逝去した桂信子への追悼句。作者は生前の桂信子と、歳時記の編纂や対談などを通じて幾多の交流があり、この句の「一会(いちえ)」は、その中でも鮮明な思い出を残した印象深い「一会」だったのだ。作者の胸中の「一会」は、季節が移り、時間が経過しながらもいよいよ鮮明になっていく。平成17年作。『風の空』所収。

