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俳句の庭

  • 屍の傷む八月来りけり 今瀬剛一

    8月 16th, 2023

    「八月」は8月8日頃に立秋を迎えることから秋の季語とされている。依然として暑さが厳しい日々が続き、原爆忌、終戦日、お盆と、物故者や祖先を偲ぶ機会も多い。相変わらず残暑は厳しいが、徐々に秋の到来を感じることも増えてくる。

    掲句は、八月の印象を「屍(しかばね)が傷む」季節と大胆に表現した。原爆投下や空襲の惨状は、直接経験していなくても、写真や映像によって脳裏に焼き付いている人は多いだろう。八月の極暑の中で傷んでいく屍のイメージは、生々しく読む者に迫って来る。『俳壇』2023年9月号。

  • 祭

    8月 15th, 2023

    古くは京都の賀茂両社の賀茂祭(葵祭)を単に「祭」とよんできたが、その後、賀茂祭以外の夏の祭りも「祭」と称するようになった。夏の祭りは疫病や水害その他の災厄からの加護を祈るものが多く、主として都市部の神社を中心に執り行われる。祭の際には、祭神の出御のために神輿の渡御や山車・鉾の巡行が行われる。神輿や山車等は地上に降りてきた神の乗り物であり、これに笛や太鼓の祭囃子が付き添って巡行がなされる。

  • 柚の花

    8月 15th, 2023

    柚子は、中国原産のミカン科の常緑樹で平安時代に日本に渡来。耐寒性があるため、山地などでも栽培されている。5月に独特の香りをもつ小さな五弁花をつける。実は薬味等として、日本料理では珍重されている。単に柚子といえば果実を指し、秋の季語。また、熟す前の青柚子は夏の季語。

  • 近江まで吹かれに来たる青田風 名村早智子

    8月 15th, 2023

    植えた早苗が伸びて田圃は日に日に青々としてくる。稲が生長した田の面を爽やかな風が吹きわたる。

    近江という旧国名は琵琶湖をかかえる今の滋賀県のこと。古くは松尾芭蕉から森澄雄まで、多くの俳人を惹きつけてきた地。作者も、その近江を訪れて青田風に吹かれているのだ。「吹かれに来たる」との措辞に風狂の味わいがあろう。『俳壇』2023年9月号。

  • 秋晴れの一部始終を兎の瞳

    8月 14th, 2023

    秋晴れは、秋の空が青々と澄み、高々と晴れわたること。ものの輪郭が明快で、吹きわたる風も爽やかだ。

    掲句は、たまたま馬場で飼われている小屋の兎を金網越しに覗いたとき、その目の澄みが心に残ってできた作品。兎の目に映る空や木々や馬場の建物など何から何までが、折りからの秋晴れの澄んだ空気の中で、くっきりと息づいていた。「一部始終」には万物という意味だけでなく、一日の時間の経過をも表現したつもりである。当時せっせと応募していた毎日俳壇で、飯田龍太選の特選となった思い出の一句でもある。平成5年作。『河岸段丘』所収。

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