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俳句の庭

  • 芭蕉の推敲(6)

    10月 1st, 2023

    名月や児立ち並ぶ堂の縁 芭蕉                 元禄3年8月15日、義仲寺の草庵に会した門人らと月見をした折の作。謡曲『三井寺』には、住僧が弟子を連れて講堂の庭での月見に出る場面があり、芭蕉の発想の契機はその辺りだろう。また、旅中の芭蕉には、寺院に預けられている剃髪しない少年修行僧(稚児)を見かける機会もあっただろう。このような稚児は、寺という男性社会における女性的な存在だったといわれる。いずれにしても、芭蕉は、自らの想像力や旅中の見聞を駆使して、名月を前に立ち並ぶ稚児を思い描いた。

    名月や海に向へば七小町 芭蕉                       この再案も、前掲の初案とは趣向を変えながらも、やはり幻想美を求めた句。名月に照らし出された琵琶湖の景色が、月の位置によって刻々と趣を変えるさまに、小野小町の七変化の姿を思い寄せた。なお、七小町は、小野小町の伝説に取材した七つの謡曲の総称。才色兼備の若い小町から老いて落魄した小町まで、それぞれに脚色される。

    名月や座に美しき顔もなし 芭蕉                    前掲の2句に飽き足りなかった芭蕉が、虚構の作為を現実に引き戻して治定したのがこの形。「座に美しき顔もなし」は、名月の美しさから我に返り座を見回したときの一瞬の感覚が捉えられている。この句に定まる前の句形として                    月見する座にうつくしき顔もなし 芭蕉              が伝わる。「月見する」のさり気ない表現を取るか、「名月や」の句がらの大きさを取るかは、鑑賞者によって評価が分かれるところだが、芭蕉自身が「名月や」の形に治定していることから、私もそれに従いたい。

    以上の初案、再案、最終形は、いずれも元禄3年8月の中秋の名月に際しての作である。改作の順序や経緯は、元禄9年刊行の風国編の『初蟬』に記されている。幻想から現実に引き戻されたときの一瞬の感覚を捉えたところなどは、実作者の参考になるだろう。

  • 稲

    10月 1st, 2023

    イネ科の一年生作物。陸稲と水稲があるが、日本人に馴染みがあるのは熱帯アジアを起源にした栽培種で、主として水田で育てる。大陸から伝播した稲は縄文時代後期から栽培され、米は主食として長く日本人を支えてきた。米は、トウモロコシやコムギとともに世界三大穀物の一つ。秋には稲穂が黄金色になり、稲刈りの時期を迎える。稲の栽培は農耕民族である日本人の生活の基調を形作ってきた。

  • 松虫草

    10月 1st, 2023

    マツムシソウ科の二年草。北海道、本州、四国、九州に分布する日本の固有種で、山地の草原に自生するほか、栽培種もある。初秋の頃、茎頂に青紫又は薄紫色の花を咲かせる。小花が集まって大きな頭状花を形づくり、外側の花弁が大きく広がるのが特徴。

  • 空蟬を握り潰して変声期 白濱一羊

    9月 30th, 2023

    空蟬(うつせみ)は、蝉が地上に出てきて脱皮を行ったあとの殻。盛夏の頃、木の幹や草などに殻を残して、沢山の蟬が樹上に鳴きしきる。

    掲句は声変わりの時期にある少年を詠んだ作。変声期は思春期でもあり、少年が青年へと成長していく一つの節目。その少年がなぜ空蟬を握り潰したのかは読者の想像に委ねられている。何らかの心の鬱屈がそうさせたとも読めるし、単なる手慰みなのかも知れない。いずれにしても、「握り潰す」との行為の激しさは、大人になろうとする一人の少年の心の波立ちを浮かび上がらせる。なお、下五の「変声期」は、「変声期の少年」を省略した俳句特有の省略法。『俳句』2023年10月号。

  • 冷やか

    9月 30th, 2023

    秋も深まってくると、肌に触れる物や空気をひんやりと感じることがある。この皮膚の感触が「冷やか」。手足などの皮膚に感じる冷気であったり、全身で受ける感じであったりする。また、物や空気の感触だけでなく、人の物言いや態度にもいう。「新涼」よりも本格的な秋の気配があり、「うそ寒」や「やや寒」ほど深まっていない頃の秋の感触だ。

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