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俳句の庭

  • 前をゆくふたりに我に夜の長し 山尾玉藻

    10月 27th, 2025

    「夜長」は秋の夜の長いことをいう。秋分が過ぎると、昼よりも夜が長くなり、夜の長さを実感するようになる。暑かった日々の記憶も遠ざかり、長い夜を読書などで過ごすのもこの頃。

    掲句は、秋の夜道をひとり辿るところを詠んだ作品。前を行く夫婦か恋人らしい見知らぬ二人の人影。少し離れて同じ道を辿っていく作者。前を行く二人も作者自身も秋の夜長のただ中にいる。ただそれだけの内容だが、夜長の情感が句のすみずみにゆきわたっている。『俳句』2025年11月号。

  • 凭れ合ふまま谷戸奥の捨案山子 星野高士

    10月 26th, 2025

    「案山子(かがし)」は田畑に立てられる人の形をした人形。鳥や獣から作物を守る役割があり、豊作を願う依代(よりしろ)や、畑のお守りのような存在としても親しまれてきた。収穫が終わり用済みになったものが「捨案山子(すてかがし)」。

    掲句は谷戸奥の田圃の「捨案山子」を詠む。稲刈りが終わり、谷戸の田圃の畦などに、役割を終えた二、三の案山子が地面から引き抜かれて、凭れ合う形で置いてあるという。「凭れ合ふまま」の措辞に、作者の確かな写生の目がある。「谷戸(やと)」は丘陵地が浸食されてできた谷状の地形のこと。収穫を終えた谷戸奥の田圃の情景が見えてくる。『俳句』2025年11月号。

  • 楸(ひさぎ)

    10月 26th, 2025

    アカメガシワ又はキササゲの古名。『万葉集』以降の古歌に詠まれた「ひさぎ」が上記のどちらの植物を指すのかは、現代に至るまで説が分かれている。アカメガシワは、トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木。新芽・新葉が赤くなることからこの名がある。日本各地の山地に自 生する。夏、枝先に円錐花序を延ばし、そこに小さな白色の花を咲かせた後、秋にやわらかいとげで覆われた実が生る。また、キササゲは、中国原産のマメ科の落葉樹で、薬用及び鑑賞目的で庭先や公園に植栽される。花冠は黄白色であり、開花後はマメ科特有の細長い豆果を複数形成する。俳句では、初秋に葉が散るものとして秋の季語に分類される。

    下の写真は10月下旬に撮ったキササゲ。

  • 稲扱(いねこき)

    10月 26th, 2025

    刈り取った稲の穂から、籾(もみ)を扱き取ること 。「脱穀(だっこく)」ともいう。通常は刈り取って稲架(はさ)などで一定期間乾燥させた後、稲の穂から籾を扱き取る。かつては手作業だったが、足踏み稲扱機、電動式脱穀機へと移り、最近は刈りながら脱穀もする稲刈機(コンバイン)が普及している。

  • 威銃たあんと山で折り返す 蟇目良雨

    10月 25th, 2025

    「威銃(おどしづつ)」は猪、鹿などの獣や雀を追い払うためにたてる大きな音をいう。実際に銃を撃つわけではなく、カーバイドやプロパンガスを爆発させたりして銃に似た音を立てる。田畑が広がる農山村に一定間隔で爆発音が響き渡る。

    掲句は、村に響き渡る「威銃」を詠んだ作品。「威銃」の谺は四囲の山々にぶつかって折り返してくるという。その「たあん」という擬音語が、実りの秋を迎えた村の満ち足りた静けさを感じさせて効果的だ。秋晴れの空は底抜けの青さ。村内に人影は見えない。『俳句四季』2025年11月。

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