道うるほへり桃の花したがへり 直人
「桃の花」は桜より少し遅れて、3月下旬から4月上旬頃に淡紅色の花を咲かせ、春の訪れを告げる。明治の改暦以前は、雛祭に飾られる花であった。
掲句は、作者の郷里の果樹園の桃の花を詠んだ作品。雨でしっとりと潤った道や四辺に溶け込むように咲いている桃の花が、本格的な春の到来を思わせる。「したがへり」との擬人化表現により、桃の花の優しさや豊かさが無理なく読者に伝わるところがいい。因みに、直人の既刊6句集に収められている桃の花の句は計30句。直人が愛着した句材の一つだった。この句はその中でも初期の秀作である。昭和46年。『帰路』所収。

