「山茱萸」(さんしゅゆ)も「三椏」(みつまた)も、早春に咲く黄色い花。同時季にはまんさくが、少し遅れて連翹、黄梅、山吹などが、黄色い花を咲かせる。そういえば、仲春の頃野や畑に一面に咲く蒲公英も菜の花も黄色だ。だが、同じ黄色い花といっても、その色合いには微妙な違いがある。陰気な黄色、陽気な黄色、内気な黄色、外交的な黄色など、印象はさまざまだ。
掲句は、これらの花から受ける印象の違いを表現できないかと思い、一応の形になったもの。「小声」に、春浅い頃の季節感が表れていれば幸いだ。平成18年作。『春霙』所収。