「浴衣」は、外出用のものもあるが、普通はくつろいで着る夏の家庭着。旅館の客室には、たいてい糊の利いた浴衣が用意されている。温泉に浸かった後浴衣に着替えると、心の底から旅の解放感を覚える。
掲句は、句友4、5人と木曽福島に一泊したときの作品。八方を取り囲む山々は既に暮れ切っていたが、山々の存在を確かに感じながらの旅泊だった。目には定かに見えないものの存在感が、掲句から感じ取れれば幸いだ。平成21年作。『春霙』所収。
「浴衣」は、外出用のものもあるが、普通はくつろいで着る夏の家庭着。旅館の客室には、たいてい糊の利いた浴衣が用意されている。温泉に浸かった後浴衣に着替えると、心の底から旅の解放感を覚える。
掲句は、句友4、5人と木曽福島に一泊したときの作品。八方を取り囲む山々は既に暮れ切っていたが、山々の存在を確かに感じながらの旅泊だった。目には定かに見えないものの存在感が、掲句から感じ取れれば幸いだ。平成21年作。『春霙』所収。
「瀧(滝)」は、垂直に切り立つ断崖を流れ落ちる水のこと。瀧を前にした涼味は、夏ならではの醍醐味だ。
掲句は、長野の山中の瀧を訪れての作品。折からの雨が上がったところで、水量が豊富な瀧が轟轟と音を立てて飛沫をとばし、辺りの物音をかき消す程だった。「瀧口」からは途切れなく水が落下していたが、その音が辺りの木々の緑に吸い込まれるような錯覚を覚えた。平成21年作。『春霙』所収。
「袋掛」は、林檎、梨、桃、枇杷などの栽培で、果実を鳥や病虫害から守り、外観を美しく保つため、紙の袋を掛けること。摘果の後、実の一つ一つに袋を掛けるのは、根気の要る作業だ。
掲句は、山梨県勝沼の葡萄畑での作品。行けども行けども左右は葡萄棚で、棚の奥の方で夫婦らしい二人が黙々と袋掛けをしていた。青々とした葡萄の葉を零れてくる日が、作業をしている人の肩や腰に差して揺らめいていた。平成20年作。『春霙』所収。
「茄子」は、インド原産のナス科一年生の野菜。どんな食材と取り合わせても順応する癖のない味わいとなめらかな食感が特徴で、煮物、焼茄子、天ぷら、炒め物、漬物など様々な調理法がある。最もポピュラーな夏野菜の一つ。
茄子には、紫紺色だけでなく白や緑のものもあるが、掲句からは、畑に栽培されている紫紺色の茄子を想像して欲しい。日暮れどきの茄子畑の辺に佇んでいて、自らの来し方・行く末を漠然と思っていた。既に人生の中盤を過ぎようとしているとの思いもあった。平成18年作。『春霙』所収。
蛾の多くは夜行性で、夏の夜の灯火を飛び回るので、「火蛾」「火取虫」などと呼ばれる。日本に生息するチョウ目の昆虫6000種のうち、「チョウ」と呼ばれるものは250種類で、他はすべて「ガ」であるという。「火蛾」といえば、速水御舟の日本画『炎舞』に描かれている、炎とともに舞い狂う蛾の姿が思い浮かぶ。
掲句は、山中の旅館の窓越しに見た「火蛾」が契機になってできた作品。その日は生憎の雨で、窓を打ったり、じっと張り付いたりしている蛾の後ろに、深々と山国の闇が下りてきていた。平成5年作。『河岸段丘』所収。