「花」は桜のことだが、植物としての桜よりも、心に映るその華やかな姿に重心がある。日本の春の美しさを代表する。「花月夜(はなづきよ)」は桜の花が咲いた美しい月夜のこと。
掲句は近くの川沿いの桜を詠んだもの。ほとんどが染井吉野で、ほぼ同時期に植えられたと見えて、ひと頃より梢の蕾の数が減り、見栄えがしなくなったのは致し方ないことだが、それでも花の盛りの頃夜昼となく小橋に佇むと、その華やぎや豊かさを満喫できる。誰にも乱されない贅沢な時間だ。「一朶(いちだ)」「万朶(ばんだ)」と対比することによって、咲き盛る花のボリュームを表現したかった。平成28年作。