「春の星」は春の潤んだような夜空に仰がれる星のこと。冬星の鋭さとも異なり、その柔らかな光は暖かさを感じさせる。代表的な星座は大熊座・獅子座・蟹座・海蛇座・乙女座・牛飼座など。
掲句は、春の星を仰ぎながら亡き母のことを追想しているのだろう。春の星の和やかな光が、胸裏に母の面影を呼び起こす。死とは遠くへ行ってしまうことであり、この世では二度と会うことはない。だが、胸中の母はいつも作者とともにある。「母遠しときどき近し」の措辞は、遠くて近い亡き人との距離感を過不足なく言い留めている。『俳壇』2025年5月号。