「八月」は暦の上では夏から秋へと季節がかわる月。立秋を過ぎてもしばらく暑い日が続くが、そうしたなかにも暑さは盛りを越え、徐々に秋の気配が濃くなってゆく。原爆の日や終戦の日、盂蘭盆が巡って来て鎮魂の思いを新たにする月でもある。
掲句は、亡き父の声の記憶を通して、「八月」という季節を見つめた作品。「八月」に対する思いを巡らしていくと、その奥に父の声がまざまざとよみがえるとの句意だろう。抽象的、内省的な句柄だが、終戦の日や盆の諸行事が巡ってくる「八月」に寄せる作者の思いに共感する。モノを描写することだけが俳句でないことを、改めて認識させる作品だ。『俳句界』2025年7月号。