• HOME
      • POST
      • PROFILE

俳句の庭

  • ひとひらはこの世の外へ花吹雪

    4月 14th, 2023

    「花吹雪」は、惜し気もなく風に散る桜の花びらを吹雪(ふぶき)に譬えた言葉で、「落花」の傍題。しきりに散っている桜は、その時、一切の執着を捨て去った放下の状態にあるようにも思える。

    掲句は、花吹雪の行方を目で追っていてできた作品。落花の多くは水に落ちたり幹に当たったりして途中で飛翔を止めてしまうのだが、一部の落花は、どこまでも風に吹かれて飛んで行くのだった。ふと、この世とあの世の境を越えて吹かれていくひとひらの落花を想像した。平成18年作。『春霙』所収。

  • たんぽぽに跼み遠き日身近にす ながさく清江

    4月 13th, 2023

    蒲公英(たんぽぽ)は、キク科タンポポ属の多年草の総称。さまざまな種が全国各地の道端や野原に自生する。在来種にはカントウタンポポ、カンサイタンポポなどがあり、外来種としては、セイヨウタンポポやアカミタンポポなどがある。三月から五月にかけてぎざぎざの葉の間から茎が伸び、その先端に黄色い花を咲かせる。最もポピュラーな野の花の一つ。

    掲句は、たんぽぽに跼(かが)んだとき、過ぎ去った遠い日々のことが、鮮やかによみがえったとの句意。身近に感じられたのは、たんぽぽ摘みに熱中した少女時代かも知れないし、父母とともに過ごした幸福な日々だったのかも知れない。いずれにしても、人の記憶に刻み込まれた思い出は、隔てている年月の長短とは関わりなく、何かに触発されて鮮やかによみがえるものなのだ。『俳壇』2023年4月号。

  • 初蝶に面(おもて)を上げよ哭き羅漢

    4月 13th, 2023

    「初蝶」は、春になって初めて見掛ける蝶のこと。大抵は、不意に見掛けて、たちまち見失ってしまう。もうそんな時季になったのかと、改めて春になったことを実感する。よく晴れて、日差しが惜し気もなく降り注ぐ地面や草の上などで見掛けることが多い気がする。

    川越の喜多院の五百羅漢は、実際には全部で538体あるという。笑っている羅漢、怒っている羅漢、耳に口を寄せて何か囁いている羅漢、相酌の羅漢などさまざまな羅漢がいる。その中に見掛けた、腕に顔を埋めて哭いている羅漢のことを、陽春の日差しの中でふと思い起こした。この世を拒むかのように、顔を伏せた羅漢は、一体何を嘆いているのだろう。平成20年作。『春霙』より。

  • 残り鴨

    4月 13th, 2023

    鴨は冬鳥として日本に渡来し、春になると北方へ帰ってゆくが、春がたけなわになっても、帰る時期が遅い小鴨などは、まだ帰らずに残っている。また、老いたり病気になったりして日本に留まっているのもいる。ほとんどの鴨が帰ってしまい静かになった湖に、ひっそりと留まっている鴨には、どことなく寂しさがある。

  • わたくしの漉き込まれゆく飛花落花 清水和代

    4月 12th, 2023

    「飛花」「落花」「花吹雪(はなふぶき)」などは、桜の散り際を愛でる日本人の美意識が感じられる言葉だ。惜し気もなく散り急ぐ桜吹雪の中にいて、その美しさに茫然としながら、今年の桜も見納めだと思い、止まることのない月日の流れを感じ取る。

    掲句は、「飛花落花」の中に佇む作者の幻想だろう。「漉き込む」は、紙に文字や模様が現れるように普通の原料以外の、例えば木の葉や花びらなどを混ぜて漉くこと。「飛花落花」の中にいて、それらの花びらと一緒に自身も漉き込まれてゆく錯覚を覚えたのだ。自他の境界が曖昧になるような忘我の境地が詠まれている。『俳壇』2023年4月号より。

←前ページ
1 … 569 570 571 572 573 … 578
次ページ→

WordPress.com Blog.

 

コメントを読み込み中…
 

    • 登録 開始日
      • 俳句の庭
      • WordPress.com のアカウントをすでにお持ちですか ? 今すぐログイン
      • 俳句の庭
      • 登録 開始日
      • 登録
      • ログイン
      • このコンテンツを報告
      • サイトを Reader で表示
      • 購読管理
      • このバーを折りたたむ