「水温む」は、寒さが去って、川や湖沼の水が温かくなること。仲春の頃、風が和らぎ日差しが降り注いで、冬の間人の手を切るほど冷たかった水がいつしか温み、生き物の命を育む水となる。
掲句は、人工的に育成したアユなどの稚魚を放流している場面だろう。「昃(ひかげ)る」は、一時的に雲にさえぎられて、日が翳ること。春半ばの頃、季節は進んだり戻ったりで、麗らかな日差しが差すかとみれば、たちまち雲に翳ってしまう。放流された稚魚たちも、昃ったことに驚いて寄り添ったのだ。空合いの変化に機敏に反応する稚魚たちの動きが初々しい。本格的な春が到来する一歩手前の季節感だろう。『俳句』2023年6月号。