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俳句の庭

  • 廣瀬直人の一句(3)

    2月 12th, 2026

    藍を着て藍匂はせる除夜詣 直人

    「除夜詣」は大晦日の夜から元旦にかけて、一年の感謝と新年の無事を祈り、翌年の恵方に当たる神社仏閣に参詣すること。現代では、年が明けてから参拝する「初詣」が一般的になっている。

    掲句は住まい近くの産土(うぶすな)の神社に「除夜詣」に出掛ける作者自身を詠んだもの。藍染の作務衣は作者の日常着でもあるが、この夜ばかりは新調の作務衣を着て出かけたのだ。天然藍を発酵させる際に出る藍染特有の匂いは、着古すにつれて薄れてゆくが、新調の藍染には生(き)のままの匂いがある。その匂いに、新年を迎える改まった思いが重ねられている。平成22年作。『風の空』以降の作品。

  • 廣瀬直人の一句(2)

    2月 11th, 2026

    正月の雪真清水の中に落つ 直人

    「正月」は一年の一番初めの月(一月)のことだが、特に三が日や松の内(関東は7日まで、関西は15日まで)が正月気分に浸る期間。新たな年を迎えてのめでたい雰囲気がある。松飾を立て、鏡餅を飾り、雑煮を食べて一年の無病息災を願う。

    掲句は自他ともに認める直人の代表作である。作者の自句自解によれば、新年会に山廬を訪れたときの作品であり、当日は、前の晩から降り続いた雪が朝になって止んだという。山廬裏山の湧水といい、降り止んだばかりの雪といい、素材が揃っている中で佳句を得た訳だ。対象との一期一会の出会いを活かせるかどうかが、作句の分かれ道なのだろう。

    加えて、この句のポイントは上五の「正月の」にあることを指摘しておきたい。飯田龍太は、この句について、「「真清水」の澄み、まさにここに極まった感がある。」云々と鑑賞しているが、なぜ上五が「一月の」「元日の」ではなく「正月の」なのかについての具体的な言及はない。だが、この句で点睛の働きをしているのは、「正月」という上五に据えられた季語だろう。上五に「正月の」と置いたことにより、句に馥郁とした華やぎが生まれた。白銀の雪の世界に紅を点じたような趣である。この辺りの季語の選択は、一筋縄ではいかないところ。昭和47年作。『日の鳥』所収。

  • 淡雪(あわゆき)

    2月 11th, 2026

    春先に降り、うっすらと積もっても儚く消えてしまう雪のこと。「泡雪」「沫雪」とも表記する。 気温が上がってから降るため、結晶が溶けかかって大きな雪片(牡丹雪)になりやすく、地面や木々に積もってもたちまち溶けてしまう。

  • ショール

    2月 11th, 2026

    主に冬の寒さを防ぐために肩に羽織る毛糸やウール、カシミヤなどの大判の布。防寒やファッションを目的として、和装・洋装問わず用いられる。春先の寒さをしのぐ薄手のものは「春ショール」(春季)。近年は街中で見かけることが少なくなった。 

  • 廣瀬直人の一句(1)

    2月 10th, 2026

    令和2年に刊行された『廣瀬直人全句集』に収められている諸作品から、折々の感銘句を取り上げ、読み味わっていきたい。

    一月一日山に鳶雲に鳶 直人

    一月一日は「元日」。一年の始めの日である。その日の朝に限定するときは、「元旦」「大旦」などともいう。門松や鏡餅を飾り、屠蘇を酌み、雑煮を食べて祝う。 また、「正月」といえば、新年を祝う行事や華やいだ雰囲気をイメージする。

    掲句は、「元日」「元旦」「年新た」などの既存の季語を敢えて用いずに、「一月一日」と何の飾り気もなく表現した作品。「一月一日」の8音を上に据えた8・5・5の破調の句だが、一読新鮮な味わいがある。新年を迎えた作者の決意が読む者に静かに伝わってくる。正月の華やぎを極力排除した独り心の作品であり、作者の目は鳶の舞う元日の空に向けられている。龍太の代表作〈春の鳶寄りわかれては高みつゝ〉で詠まれた鳶を通して、師弟の詩心が呼び交わす。作者晩年の絶唱といっていいだろう。直人はこの年の1月14日に病に倒れ、再び句作の筆を執ることができなかった。最後の句集『風の空』以降に発表された作品である。平成24年作。

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