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俳句の庭

  • 降る雪の彼方から来し一封書

    12月 21st, 2023

    雪に対する受け止め方は、日本海側の豪雪地帯と、めったに雪が降らない太平洋側とで異なる。稀に降る雪を珍しいものとして愛でるのは、太平洋側に住む人の心情だが、毎日遠距離を通勤する人間としては、電車を遅延させ、道を歩きにくくする雪を愛でてばかりもいられない。

    掲句はコロナ禍のテレワークで一日家にいた頃の作品。家にいながらも、時折雪の降り続く空を見上げていたのは、勤め人として雪の中を移動する苦労が記憶に刻み込まれていたからだろう。郵便受けに入っていた封書が折からの雪で濡れていた。令和4年作。

  • 櫟枯る

    12月 21st, 2023

    櫟(くぬぎ)はブナ科の落葉高木。本州、四国、九州の山野に生え植林もされる。樹皮が深く縦に裂けているのが特徴。葉は柄があり長楕円形で、縁は芒(のぎ)状に鋭く切れ込む。冬は葉を落とし切って枯木となる。

  • ぶらんこ

    12月 21st, 2023

    上方に渡した棒や梁から二本のロープをたらして台座を吊った遊具。鞦韆(しゅうせん)、ふらここ、半仙戯ともいう。古く、中国北方の異民族から中国に伝わり、寒食・春節の時期の儀式に用いられた。日本には平安時代にもたらされた。

  • 芭蕉の推敲(30)

    12月 20th, 2023

    かげろふに俤つくれ石の上 芭蕉                貞享5年、伊賀の国阿波の庄の新大仏寺での吟。芭蕉は『笈の小文』の旅中だった。懐古の情による作であることは分かるが、「俤」というだけで、詠む対象が明確に示されていないことがこの句の弱さとなっている。

    丈六にかげろふ高し石の上 芭蕉                          『笈の小文』には、「伊賀の国、阿波の庄といふ所に、俊乗上人の旧跡有り。・・・」との文の後、掲出の句形で掲載された。丈六の尊像は跡形もないのだが、「丈六に」と言ったことで、作者、読者の目に失われた丈六仏の面影が目に浮かぶ句になった。陽炎が丈六(1寸6尺)にもなることはないのでこの句は写実によるものではないが、作者の懐古の情を具象化し、目に見える形で示す言葉として「丈六に」は効果的だ。

  • 純白の常念をこそ初景色 小澤實

    12月 20th, 2023

    「初景色」は元日に眺める景色のことで新年の季語。日ごろ見慣れた景色も、新たな年を迎えた改まった心で眺めれば、格別瑞祥に満ちて目に映る。

    掲句は荒彫りの彫刻を思わせる朴直な味わいの作品。「常念(じょうねん)」は常念岳のことで、北アルプス南部の常念山脈の主峰。安曇野からは全容が望め、ピラミッド型のその端正な山容は印象的だ。雪を被った常念岳を眼前にしながら佇む作者の密かな決意も感じられる清々しい一句。『俳壇』2024年1月号。

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