冬の日の暮方。日没とともににわかに冷え込み、あちこちに明かりが灯る。空には金星やその他の星が光りはじめる。寒々とした情景であるが、どことなく生活感が漂う。「寒暮(かんぼ)」ともいうが、「冬の暮」には柔らかな言葉の響きがある。

冬の日の暮方。日没とともににわかに冷え込み、あちこちに明かりが灯る。空には金星やその他の星が光りはじめる。寒々とした情景であるが、どことなく生活感が漂う。「寒暮(かんぼ)」ともいうが、「冬の暮」には柔らかな言葉の響きがある。

蟷螂(かまきり)は鎌形の前肢で他の虫を捕食する。この虫に疣(いぼ)を噛ませれば疣が消えるとの俗説から「いぼむしり」との異名がある。気が強く、大きな相手にも立ち向かう
掲句は「いぼむしり」を鳴かせてみたいと詠む。俳句では蚯蚓(みみず)も蓑虫も鳴くことになっており、「蚯蚓鳴く」、「蓑虫鳴く」などという。これらは実際に鳴くことはないが、夕暮れや夜、はかなげな声で鳴いていると想像すると、秋の哀れが増すような気がする。肉食の蟷螂は、あまりに生々しく猛々しい存在であり、鳴くと想像しても余り秋の情趣は感じないが「いぼむしり」と表記されると、秋の夜長などに鳴かせてみたいものの一つに数えるのも悪くない。「いぼむしり」という言葉の語感が活かされている作品だ。『俳句』2024年12月号。
陰暦9月9日の重陽(菊の節句)を過ぎた菊のこと。「十日の菊」ともいうが、「十日の菊」は、時期はずれで役に立たないことの譬えにも用いられる。一般的には、盛りを過ぎた晩秋の菊をさす。

イタヤガイ科の二枚貝。房総半島から九州にかけての沿岸の砂泥に生息する。殻は円形で、殻の色が淡黄白色と赤褐色と左右異なることから、それぞれを月と日に見立ててこの名がついた。 貝柱は美味しく、殻は細工物に利用する。旬は冬から春。

俳句で「虫」といえば、昆虫の中でも、秋に鳴くキリギリス科・コオロギ科の虫のこと。立秋の頃からキリギリスやコオロギなど様々な虫が鳴き始める。秋めいてくる夜風の中で澄んだ虫の音を耳にするのは至福の一時だ。
掲句は様々な虫がすだく秋の日本列島を「虫の島」と表現して、悠久の時間の流れの中に浮かぶ日本列島を描き出した。今から2000年ほど前まで、日本はユーラシア大陸の一部だったが、大陸の縁が東西に引き裂かれ、日本列島の地殻が大陸から離れたという。大陸から離れた日本には独自の文化が花開いた。虫の音に風情を感じ、深みゆく秋の哀れを重ねて詩歌に詠んだのは、日本人独特の感性であり、文化である。「虫の島」には、伝統的に虫の音を愛でてきた日本人の住む島との意味合いもあるだろう。『俳句』2024年12月号。