
11月に入ると朝晩の冷え込みが厳しくなって、空の色や星が冴え冴えとしてくる。東の空の藍色から茜色へのグラデーションの中で明けの明星(金星)がきらめく。暦の上で冬になるのも、もう間近だ。

11月に入ると朝晩の冷え込みが厳しくなって、空の色や星が冴え冴えとしてくる。東の空の藍色から茜色へのグラデーションの中で明けの明星(金星)がきらめく。暦の上で冬になるのも、もう間近だ。

近くのショッピングセンター屋上から撮った富士山。夕暮どきの茜色が山の右裾の空をうすうすと染めている。、今年(2025年)の富士山の初冠雪は10月23日で、平年より21日遅かったという。初冠雪から十日余り経ち、立冬を前にして、山頂の冠雪が関東からも目につくようになった。
旧暦の9月の異称で、新暦ではほぼ10月に当たる。菊の花が咲き盛る時期であることからこの名がある。夜が長くなり、朝晩めっきり冷え込むようになる。「長月」の傍題。

「冴(さ)ゆ」は寒さが極まって、あらゆるものに透き通ったような冷たさを感じること 。闇、風、月、星などを「冴る夜」「冴る風」「冴る月」「冴る星」などと表現する。
掲句は、元禄七年(1694年)10月12日に大坂で客死した松尾芭蕉の亡骸を収めた柩(ひつぎ)が搬ばれる様を想像しての作品。秋の夜長に、文暁の『花屋日記』などを読んでいて、自ずから脳裡に浮かんだ一句だったと記憶している。木曽義仲に傾倒していた芭蕉は生前「骸は木曽塚に送るべし」との遺言を残していた。弟子たちはその遺言にしたがって、芭蕉の亡骸を川舟で伏見まで運び、義仲寺境内の木曽塚の隣に葬った。折から初冬の頃で、柩を搬ぶ川舟の上には夜ふけの星が冴えてまたたいていただろう。平成16年作。『春霙』所収。
「冬に入る」は暦の上で立冬を過ぎたことをいう。まだそれ程寒くないが、日々の生活の中で実感として冬の訪れを感じ取ることも多い。「立冬」は陽暦の11月8日頃。
掲句は、本郷キャンパスにある東京大学総合研究博物館に展示されていた縄文人の骨骼標本(こっかくひょうほん)に触発されての作品。垂直歩行の人の姿勢そのままに、直立した骨骼標本が展示されていた。静まり返った館内には、既に冬めいた空気が漂い、骨骼標本の辺りだけ時間が止まっているような錯覚を覚えた。平成16年作。『春霙』所収。