「花吹雪(はなふぶき)」は風に舞い飛ぶ桜の花びらを吹雪に譬えた言葉。爛漫と咲き盛る花が惜し気もなく散っていく様に、日頃心の奥に眠っている古来からの日本人の美意識が呼び覚まされる。
掲句は、花吹雪を眺め、時には花吹雪に包まれながら、自らの心の内にひとつまみ程の狂気を念じたもの。佳き詩は天から恵まれるもので、自らの力量を超えた何かものかが宿らないと得られないと古来から言われている。花吹雪の中にいて、言葉に霊力を与えてくれる人智を超えたその何ものかを思っていた。それは自らの内の一つまみ程の狂気であっても、天から降臨する詩の神であっても、外界の人やモノとの偶然の出会いであってもいい訳だ。平成29年作。