「李」(すもも)は古く中国から渡来し、春、桜より遅れて白い花を咲かせる。野育ちの少女のような小振りで可憐な花だ。李には多数の品種があり、東アジア産の二ホンスモモと西アジア産のセイヨウスモモに大別されるが、わが庭に咲いていたのはセイヨウスモモだったと思う。秋には、熟した実を取って食べるのも、その頃の楽しみの一つだった。
掲句は回想の作品であり、眼前に李が咲いている訳ではない。父母は既に亡く、父母や妹たちと過ごした日々は過去のものだし、当時庭先に咲いていた李の木は、何年も前に寿命で枯死してしまった。それでも、父母とともに過ごした日々は、咲き盛る李の花の明るさとともにある。令和3年作。

