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俳句の庭

  • 鰭酒(ひれざけ)

    2月 28th, 2025

    フグの鰭を炭火で炙り焦げ目をつけて器に入れ、熱燗の酒を注いだもの。注いだ酒の表面に火をつけて飲むこともある。その琥珀の色合いや香ばしさを楽しむ。鰭の代わりにフグの刺身の一片を使うのが「身酒」。かつて、安酒を美味しく飲む手段として定着したという。

  • 熱燗や八方にある名無し山 石田郷子

    2月 27th, 2025

    「熱燗」は体を温めるために熱く燗をつけた酒のこと。沸いた鉄瓶の湯に徳利をつけるのが定番だが、最近は電子レンジなどで温めることも多い。

    掲句の作者は女性だが、性別に関わりのない山住みの人の生活実感がよく表れている作品だ。「熱燗」は冬の夜の愉しみの一つ。既に夜闇に紛れつつある「八方の山」。どれもこれも名のある山ではない。その何の変哲もない雑木山といつしか長い年月をともに過ごしている。「名無し山」という飾らないぶっきらぼうな措辞と、「熱燗」という酒の最も素朴な飲み方が響き合い、作品に益荒男振り(ますらおぶり)の味わいをもたらしている。『俳句』2025年3月号。

  • 春の星

    2月 27th, 2025

    春の夜潤むように見える星のこと。冬の間中天を占めていたオリオン座やスバルに替わって、春になると獅子座や北斗七星が目立ってくる。大熊座・蟹座・海蛇座・乙女座・牛飼座などが春の夜空を巡る。水蒸気のために緩んだ夜気の中で、星々はやわらかな光をまとう。

  • プリムラ

    2月 27th, 2025

    ヨーロッパ原産のサクラソウ科サクラソウ属の多年草。プリムラ・ポリアンサ、プリムラ・ジュリアンなど多くの園芸品種が作られている。冬から春にかけて開花する。赤、ピンク、黄、白、紫、青、臙脂、複色など花色は多様。俳句では「桜草」の傍題。「桜草」が日本原産の多年草であるのに対し、「プリムラ」は西洋種。

  • キューピーの手足みじかし水温む 大木あまり

    2月 26th, 2025

    「水温む」は、寒さが去って、川、湖、池などの水が温かくなること。水草が芽を出し、水底に潜んでいた魚がうごきだす。

    掲句は「キューピー」の手足が短いとの発見を、折りからの春暖の季節感の中で詠んだ作品。「キューピー」は言うまでもなく、ローマ神話に出てくる恋愛の神キューピッドを幼児体形につくったマスコット人形。頭のとがった裸体の童形で、背中に小さな羽がはえている。「キューピー」の愛らしい形は、ものの命がうごきだす春の季節感とぴたりと照応する。「水温む」は、春到来の気分を具象化する季語として的確に選び取られた。草木虫魚とともに、「キューピー」にも瑞々しい命が宿っているような錯覚を覚えさせる。『俳句』2025年3月号。

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