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俳句の庭

  • 雲豹のあくびに花の散りかかる 福田若之

    3月 11th, 2025

    「花」といえば桜のことだが、植物であることに重きがおかれる桜に対して、「花」は、心に映るその華やかなイメージに重心がある。桜の花が盛りを過ぎて散ることを「花散る」「散る桜」などという。

    掲句は動物園の「雲豹(うんぴょう)」に「花」が散りかかる情景を詠んだ作品。豹に近い仲間であり、雲状の斑紋があることからこの名がある。東南アジアの森林に生息するというが、この句の「雲豹」は飼育されているもの。永い春の日中、飽食の「雲豹」が退屈の余り大きな口を開けて欠伸(あくび)したのだ。もうすっかり故郷の森で狩りをしていた頃の野性を忘れ去っているかに見える。折から咲き闌けた桜が、風が吹くたびにほろほろと散りかかる。『文藝春秋』2025年4月号。

  • 春子鯛(かすごだい)

    3月 11th, 2025

    真鯛の幼魚のこと。春に生まれ、小型で、桜のような美しい色合いをしているのでこの名があるという。春から夏にかけての、成魚の鯛が産卵期を終えて味が落ちてしまう時期が旬とされる。歳時記には載っていない。なお、産卵前の脂がのった真鯛は「桜鯛」(春季)として珍重される。

  • 三月十日

    3月 11th, 2025

    「東京大空襲忌」ともいう。昭和20年3月10日、アメリカ軍の焼夷弾爆撃により、深川など下町を中心に東京は焼野原となった。この日、300機のB29爆撃機が木造家屋の密集地域を狙っておよそ1600トンの焼夷弾を投下したという。死者は8~10万人。アメリカ軍による最初の本格的な都市空襲となった。

  • 新季語探訪(4)

    3月 10th, 2025

    東日本大震災が発災したのは2011年3月11日。2022年には「新版 角川俳句大歳時記」に、「東日本大震災の日」が新たに春の季語として加わった。季語として定着してきたことを示すものだろう。「東北忌」「三月十一日」「三・一一」「福島忌」「原発忌」「フクシマ」などとも詠まれ、毎年3月が来ると、東日本大震災関連の多くの句を目にする。

    三・一一神はゐないかとても小さい 照井翠

    僅か十七音の詩型ではあるが、人々の心に棲みつくような句を詠み継ぐことで、震災の記憶が後世の人々に引き継がれていく。一方、秀句や佳句の裏付けがあって始めて季語としての存在感が増すことは言うまでもない。

    日付を用いた季語としては、他に「三月十日」、「八月十五日」、「十二月八日」などがあり、いずれも東京大空襲や終戦、太平洋戦争開戦など、日本人にとって忘れることのできない出来事が生起した日だ。その中に慶事は含まれていない。このことは、日本人の精神の特性を暗示しているのかも知れない。

  • 馬面剝(うまづらはぎ)

    3月 10th, 2025

    フグ目カワハギ科の魚で、単に「馬面(うまづら)」ともいう。その名の通り吻(くち)が長いのが特徴。体長約25センチで、北海道から九州までの内湾や内海に生息する。肝のふくらむ秋から冬の「馬面剝」は非常に珍重され美味だが、主たる漁期は夏。刺身、鍋物、汁物などとして食する。

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