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俳句の庭

  • 昭和遠し縦に流るる天の川 坂本宮尾

    10月 5th, 2025

    「天の川」は初秋の澄み渡った夜空に帯状に白く濁って横たわる無数の星のこと。川のように見えるので、「銀河」「銀漢」ともいう。晩夏から初秋にかけて最も明るく美しい。七夕伝説の織姫と彦星を隔てる川で、二つの星は年に一度、旧暦7月7日の夜にこの川を渡って逢うことをゆるされる。

    掲句は、「天の川」を仰ぎつつ、昭和という時代が既に遥かに隔たってしまったことを詠む。中村草田男が昭和六年、〈降る雪や明治は遠くなりにけり〉と詠み、明治が既に遠い一時代となってしまったことを詠嘆した。これに対して、掲句は令和7年の今の世にあって、「昭和遠し」と詠嘆する。「縦に流るる」との措辞も、真南から天頂へ起ち上る晩夏から秋にかけての「天の川」の描写として的確。『俳句』2025年10月号。

  • 蝮蛇草の実

    10月 5th, 2025

    「蝮蛇草(まむしぐさ)」はサトイモ科の多年草。全国の明るい林内の少し湿った場所に自生する。早春、直立した茎の先に仏炎苞を形成し、この中に花序をもつ。苞は緑や紫褐色などで、その形が蝮(まむし)の首をもたげたところと似ているからこの名がある。秋になると真っ赤なトウモロコシのような実をつける。単に「蝮蛇草」といえば春先の花を指し、春の季語。秋につける実も、歳時記には掲載されていないが、独特の存在感がある。

  • 秋意(しゅうい)

    9月 27th, 2025

    秋の気分、秋らしい趣や秋の風情をいう。秋の風景や天候の中で揺れ動く心の働きが引き起こす情緒である。澄みわたった明るさの中に、物寂しさやしみじみとした感情を宿す。

  • 犬麦(いぬむぎ)

    9月 27th, 2025

    南アメリカ原産のイネ科の一年草または越年草。ムギに似ているが食べられないことからこの名がある。明治時代初期に牧草として日本に渡来し、その後、全国の平地で雑草化した。6~7月頃、密集する10個内外の花からなる緑色の小穂を円錐花序に付ける。なお、歳時記には掲載されていない。

  • 野仏のつむりを蹴つて蝗飛ぶ 橋本榮治

    9月 27th, 2025

    「蝗(いなご)」はイナゴ科に属するバッタ類の総称。「螽」「稲子」とも表記する。体長は3センチほどで体色は黄緑色。実りの田に棲みついて、稲を荒らす害虫。捕まえて佃煮などにする。

    掲句は、稔り田の傍らに立つ野仏の頭にたかった「蝗」をユーモラスに詠む。「あたま」「かしら」と言っても同義だが、「つむり」と言ったところに、野仏に対する作者の親しみと心の余裕が表れている。一匹の「蝗」を見かけてもそう目くじらを立てることはないのだ。一面の稲穂が波立って、今年の豊作を約束しているのだから。『俳句』2025年10月号。

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