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俳句の庭

  • 十六夜(いざよい)

    10月 12th, 2025

    旧暦8月16日の夜の月、又はその夜のこと。「既望(きぼう)」ともいう。月は満月を過ぎると少しずつ欠けはじめ、月の出も少しずつ遅くなる。「十六夜(いざよい)」は、その最初の月で、前夜の満月よりやや遅れて昇ることからこの名がある。動詞「いさよふ」はぐずぐずする、ためらふの意。

  • 炎天を来て祭壇に火を供ふ

    10月 11th, 2025

    「炎天」は太陽の日差しが強く、焼け付くような真夏の空のこと。

    掲句は今年(令和7年)の6~7月に南仏を旅行したときの作品。日本と同様、その頃のヨーロッパも熱波に見舞われていた。コートダジュールからプロヴァンスにかけてのエリアを巡る中で、多くの教会や大聖堂の内部を見る機会があったが、その日は地中海沿岸の港町ヴィルフランシュ・シュル・メールのサンピエール礼拝堂やサンミシェル教会を訪れた。礼拝堂の朝の祭壇(さいだん)には、礼拝に来た人たちの蠟燭の灯が二、三ともっていた。キリスト教信仰とは無縁の私だが、その地に住み、心の拠り所として日々教会に親しんでいる人々の心持ちを想像してみた。教会の天井辺りに鳥の巣があるらしく、雛鳥の声が時折こぼれてきた。令和7年作。

  • 爽やか(さわやか)

    10月 11th, 2025

    大気が澄み切って、遠景がくっきりと見え、さらりと乾いた秋風が吹くこと。また、より主観的に、その風に包まれるときのさっぱりとして心地よい感じ。さらには、秋の清々しい気分全体を指す。「爽気(そうき)」「秋爽(しゅうそう)」「爽涼(そうりょう)」などともいう。

  • 子持ち鮎

    10月 11th, 2025

    秋になり水温が低下すると、鮎(あゆ)の体は橙と黒の婚姻色に変化し、産卵のため下流へ下り始める。この頃の鮎が「錆鮎(さびあゆ)」「落鮎(おちあゆ)」だが、産卵前の鮎は「子持ち鮎」とも呼ばれる。多くは塩焼きや甘露煮にして食され、独特の食感とコクがあるという。産卵した鮎は、体力を消耗して多くは死んでしまう。

  • 南仏紀行(11)

    10月 10th, 2025

    7月中旬の一日、モンブラントンネルを通ってイタリアに足を延ばした。同トンネルはアルプスのモンブラン山群を貫き、フランスのシャモニーとイタリアのクールマイユールを結ぶ自動車専用トンネル(全長11.6km)。1965年の開通当時は道路トンネルとしては世界最長だったという。過去の火災事故の教訓もあってトンネル内の車の台数が制限されているため、トンネルの手前での停車時間が長かったが、いったん車が動き出すとスムーズに通過することができた。なお、現在の世界最長の道路トンネルはノルウェーのラルダールトンネル(全長24.5km)。

    トンネルを抜けるとそこは北イタリア。アルピニズムの聖地であり、針峰(しんぽう)とも呼ばれるシャープな稜線が連なっていたシャモニーに対して、そこは明るく伸びやかな農村風景が広がっていた。伊仏国境の最高峰モンブランのイタリアでの呼び名はモンテ・ビアンコ。イタリア語で「白い山」の意だが、モンブランよりもどこか伸びやかな響きがあるのは気のせいだろうか。

    放牛の背にさんさんと夏の日差しが降り注ぎ、首に下げたカウベルが澄んだ音を立てていた。注意して聞いていると、カウベルはそれぞれ違う音色を響かせている。関係者なら、その音を聞いただけで、どの牛か特定できるのかも知れない。私たちが草の上に座って昼餉のサンドウィッチや桃を食べていると、頭上の枝で駒鳥が澄んだ声で鳴いた。

    同じモンブラン山群を反対から眺めているだけなのに、イタリア側から眺める山々は雪が少なく、峻険さよりも、ゆったりと寛いでいる趣があった。道には、家族連れでハイキングを楽しむ人に混じって、自転車で子供を乗せた乳母車を引く男性の姿があった。シャモニーでは見られない光景だった。

    帰り際に、チーズの専門店に立ち寄った。わずか数時間だったが、イタリアの空気を少し吸うことができた。

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