「明易し」は「短夜」の傍題。夏の夜の短さを惜しむ心に重きが置かれている季題だ。夜が明け白んでくる安堵感と名残惜しさが入り交じる。夜が明けても、心はゆらゆらと夜と朝の間を漂う。
掲句は、美術館に展示されていた空也上人絵伝が契機になってできた作品。空也上人(903~972)は、日本で初めて称名念仏を実践した高僧。絵伝は、その生涯を、連続する絵と詞書によって示したもの。野ざらしの髑髏を供養する空也上人の姿を描いた絵もその中にあった。人の一生の儚さということを、不意に突き付けられたような気がした。平成14年作。『河岸段丘』所収。