秋晴れは、秋の空が青々と澄み、高々と晴れわたること。ものの輪郭が明快で、吹きわたる風も爽やかだ。
掲句は、たまたま馬場で飼われている小屋の兎を金網越しに覗いたとき、その目の澄みが心に残ってできた作品。兎の目に映る空や木々や馬場の建物など何から何までが、折りからの秋晴れの澄んだ空気の中で、くっきりと息づいていた。「一部始終」には万物という意味だけでなく、一日の時間の経過をも表現したつもりである。当時せっせと応募していた毎日俳壇で、飯田龍太選の特選となった思い出の一句でもある。平成5年作。『河岸段丘』所収。