「惜命忌」は俳人石田波郷の忌日で11月21日。昭和44年のこの日、56歳で没した。その生涯の多くを結核療養に過ごし、〈七夕竹惜命の文字隠れなし 波郷〉の作などがある。
掲句は夜、町中の花舗(かほ)に立ち寄っての作品。花舗は花や植物を販売する店舗(花屋)のこと。既に暗くなった夜道に花舗がひと際華やかな灯明りをこぼしており、私はその灯に吸い寄せられるように近寄り、ポインセチアやシクラメンなどの花々を照らしている明るい店内を覗き込んだ。半身が灯に照らし出されたのはわが身だったが、長身の波郷がその場に佇むさまを何となく想像した。波郷は肋骨切除のため肩をとがらせた痩身だったという。平成16年作。『春霙』所収。