「年の暮」は12月も押し詰まった頃のこと。12月の中旬頃から正月の準備を始めることも多く、一年が終わりつつある実感が湧いてくる。ことにクリスマスが終わると、その感が強くなる。年末の慌ただしさや新年を迎える準備、そして過ぎ去る年への感慨が入り混じる。
掲句は唐墨色(からすみいろ)の月の暈(かさ)を仰いで、多事だった一年が暮れてゆくことを改めて思っているとの句意。 月の暈は、夜空に薄い雲がかかっているときなどに見られる。その夜は、月の暈が唐墨色に見えた。唐墨は、主にボラの卵巣を塩漬けにして乾燥させた珍味。形が中国伝来の書道用の墨に似ていることから、その名があるという。長崎県産のものが有名。一般には余り馴染みのない唐墨を目にしたことがあるのも、出張の多い職場に勤めていた名残だろう。平成22年作。