空つ風草々の色引き剝がし 直人
「空つ風」は日本海側で雪を降らせた北西の季節風が、山脈を越えて太平洋側の関東平野などに吹き下ろしてくる、冷たく乾燥した強い風のこと。
掲句は、甲府盆地を吹き抜ける「空つ風」が、草々の色を引き剥がしていくと詠む。冬の甲府盆地では、乾燥して冷え切った空気が八ヶ岳の斜面を駆け下り、遮るもののない盆地へと一気に吹き込んでくる。土地の人が八ヶ岳颪(やつがたけおろし)とも呼ぶ季節風である。「空つ風」は、それまで青さを保っていた草や枯れつつある草も含め、山野の草々の色を一挙に奪っていく。満目蕭条とした冬の到来である。生まれ付いた自らの風土に注がれる作者の、狂いのない眼差しが思われる。平成14年作。『風の空』所収。