廣瀬直人の俳句(92)

冬来るぞ冬来るぞとて甲斐の鳶 直人

「冬来る」は、暦の上で冬に入ること、また冬の気配が感じられはじめること。まだ本格的な寒さではないものの、吹く風や朝の空気に冬の気配が混じり始める頃である。「立冬」の傍題。

掲句は、冬が到来したことに気を引き締めながら、空高く舞う鳶を仰いでの作品。上空の鳶の舞う様が、冬の到来を告げているように見えたのだ。「冬来るぞ」のリフレインは、山国に冬が来たことを強く自らに言い聞かせている趣もある。冬が到来したことを感じ取っているのは鳶でもあり作者でもある。両者は同じ甲斐の風土を生きるものとして一体になっている。対象との緊密な一体感が、この句の味わいの源だろう。平成13年作。『矢竹』所収。

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