ひろびろとうしろ日暮れて餠筵 直人
「餠筵(もちむしろ)」は、年末の餅つきで作ったのし餅や鏡餅を、冷まして適度な硬さに固めるために広げて並べておく筵(むしろ)のこと。つきたての熱い餅を筵に広げ、手頃な堅さになるまで寝かせておく。年末の光景。
掲句は、年末の餅つきが終わった後の日暮れの景を詠んだもの。餅つきの賑わいや熱気も去り、身辺が静かになった作者の胸には、行く年来る年に対する様々な感慨が去来しているのだろう。「うしろ日暮れて」とのやや抽象的な心象を含んだ措辞が、作者の忘年(ぼうねん)の思いを浮かび上がらせる。平成5年作。『遍照』所収。