雪こんもりと月日あり月日なし 直人
「雪」は上空の雲の中で水蒸気から作られた氷の結晶が、溶けずにそのまま地上へ落下してくること。春の花、秋の月と並び、四季の美しさを象徴する雪月花の一つとして古くから親しまれてきたが、冬の人々の生活や移動に制約を加えるものであり、雪魔と恐れられる一面も持つ。
掲句は、屋根や木々にこんもりと降り積もった雪を前にして、過ぎ去った月日に思いを馳せての作品。「月日あり月日なし」の対句表現は、降る雪の中で時が止まったように見える雪景色を詠んだもの。時が止まったように見えながら、雪は依然として降り続いて、とどまるところを知らない。自らの来し方を見つめる作者の静かな内面を思わせる。昭和61年作。『朝の川』所収。