廣瀬直人の俳句(80)

年深まりて青空に鳥の道 直人

「年深し」は12月も押し詰まり年が終わろうとする頃をいう。慌ただしさよりも、一年が終わりつつある時期の時の重みや静けさ、しみじみとした感慨を含む言葉。「年の暮」の傍題。

掲句は年が深まる頃の故郷にあって空を仰いでの作品。秋口の霖雨や台風の大雨が嘘のように、この頃は天気が安定し、日々晴れて青空が続く。空を横切っていく鳥たちを、ことさら渡り鳥と考える必要はないだろう。普段見慣れた留鳥の椋鳥でも鴉でもいいし、Ⅴ字をなして飛ぶ雁や鴨を想像してもいい。ともかく塒を発ち、塒へ帰って行く鳥たちが、朝な夕な作者の頭上を越えていく。日々繰り返されるそれらの鳥たちの営みとともに、作者の身辺も年が深まっていく。その地に定住土着している人の目が捉えた年末の独り心の風景であろう。昭和49年作。『日の鳥』所収。

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