廣瀬直人の俳句(78)

枯谷の真竹の月日満ちてをり 直人

「枯谷(かれだに)」は草木がすっかり枯れ果て、荒涼とした寂しい雰囲気に包まれた冬の渓谷や谷間のこと。「枯山(かれやま)」の傍題としている歳時記もあるようだ。

掲句は、満目枯れ切った谷に生えるひと叢の真竹の鮮やかな緑に、過ぎ去った月日の豊かさがよみがえるとの句意。作句の経緯は詳らかではないが、この句の「枯谷」に、作者の師飯田龍太が住む山廬周辺の谷の面影を感じるのは私だけではないだろう。「真竹の月日」はそこに定住する師の月日であり、『雲母』編集のために通い続けた作者自身の月日でもある。龍太は、句集『帰路』の序文で、この句を引き、「直人さん自身の作品には真竹の色がある。それも真冬の、みずみずしく直立群生した趣があるように思う。」と記した。作者の句風と人柄が端的に浮かび上がる至言と思う。昭和46年作。『帰路』所収。

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