「蜩(ひぐらし)」はセミ科ヒグラシ属のセミの一種。日本全国及び千島列島に生息する。朝夕の薄暗い時間帯に、鈴を振るような透明感のある声で鳴く。その哀愁を帯びた声は秋の訪れを感じさせる。
掲句は、離郷した作者が、一時的に故郷に帰っての感懐を表出した作品。作者の生家を含め、近隣のどの家も、そこから独り立ちしていった子供たちの生家だというのだ。中には、定住して生家に住み続けている幼馴染もいるのだろうが、大方の若い人は、生家を去って都会に出てしまっている。そんな田舎の光景にともなう一抹の寂しさが、「夕ひぐらし」に託されている一句。『俳句』2026年10月号。