廣瀬直人の俳句(77)

麦の芽が風筋を知り始めけり 直人

「麦の芽」は秋(10〜11月頃)に蒔かれた麦が、冬の初めに青々とした小さな芽を出した姿をいう。日本の多くの地域では晩秋の頃に麦の種を蒔き、間もなく芽を出して冬を迎える。周りの草木が枯れていく冬枯れの景色の中で、麦の芽の一筋の緑は目に鮮やか。

掲句は、「麦の芽」を擬人的に詠んだ作品。「風筋(かぜすじ)」は風の通り道や、風が吹く筋道・気流の流れを意味する言葉で、「風筋」に冬の到来を感じ取っているのは季節の推移に敏感な作者自身である。作者と同じ風土に生きる「麦の芽」は、謂わば作者の分身。作者と定住する故郷の風土との一体感がごく自然に表れていて、味わいがある。昭和45年作。『帰路』所収。

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