廣瀬直人の俳句(76)

極寒の臼をころがす日向の音 直人

「極寒」は冬の厳しい寒さのこと。「厳寒」「厳冬」「酷寒」「寒きびし」などともいう。1月下旬から2月上旬にかけて寒さが極まり、空気や地面、水道などが凍りつく。

掲句は、日向に臼を転がす音に「極寒」を感じ取っての作品。重い臼を無理に持ち上げず、板などを使って転がして運ぶのは農家の人たちの生活の知恵。臼を転がして場所を移動するのは、餅つきの前後の作業だろうか。餅つきは年末が恒例だが、小正月や旧正月にも行われる。寒さが極まる頃だが、一歩ずつ春が近づいてくる明るい気分がどこかに感じられるのも、この季節の特徴。作者の聴覚の確かさを思わせる一句。昭和38年作。『帰路』所収。

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