一汁に買ひ足す葉物秋の暮 辰巳奈優美

「秋の暮」には、秋の日の夕暮れ(一日の終わり)と、秋という季節の終わり・晩秋という2つの意味がある。日本の詩歌ではこの2つの意味が重なり合い、単なる時間の経過だけでなく、もののあはれや何とも言えない寂しさ、切なさを表現する言葉として大切にされてきた。

掲句は「秋の暮」という伝統的な季語を用いて、日常生活の機微を掬い上げた作品。一汁(いちじゅう)というのだから、味噌汁や澄まし汁など和食の汁物だろう。今夜の味噌汁に入れる葉物は何にしようかなどと考えながら、買い物をしているのだ。葉物は小松菜、ホウレン草、三つ葉などだろうか。日々繰り返されるごく卑近な日常の一コマが、下五の「秋の暮」により、しみじみとした情感を宿す一句に仕上がっている。『俳壇』2026年10月号。


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