今朝秋のかりそめならぬ樹と思ふ 直人
「今朝の秋」「今朝秋」は暦の上で秋が始まる立秋の朝のこと。まだ厳しい暑さが続く時期だが、その日の朝の空気や風に、ふと、初めて秋の確かな気配を感じたとの意。二十四節気の一つである立秋(新暦の8月7日頃)の傍題。
掲句は、作者の身辺にある樹を詠んだ作品。私は、直人邸の庭に立つ相当の年数を経た黒松や栃の木、梅などを思い浮かべた。「かりそめならぬ(仮初めならぬ)」は、作者とその樹との縁(えにし)が一時的なものではなく、生涯続くものであるとの意味合い。いつも生活の傍らにあって風土を共にする樹に対する、一通りの共感を越えた緊密な一体感が表出されている。生涯そこに住み続けているからこそ得られる境地だろう。平成14年作。『風の空』所収。