廣瀬直人の俳句(67)

草踏んで獣通りし無月かな 直人

「無月」は陰暦8月15日の中秋の名月(十五夜)の夜に、生憎空が曇って月が見えない状態を指す。本来見えるはずの満月が隠れていることを残念に思いつつ、見えないからこそ心の中で月を想うところに日本独特の情緒がある。

掲句は、「無月」の夜、暗がりを草を踏んで獣が通って行ったという。獣は、タヌキやテン、アライグマ、ハクビシンなど、人の生活圏に出没する獣を思い浮かべたい。人の生活圏と自然界の生き物とが隣り合いながら共存する世界である。根底には、自らも獣らとともに同じ風土を生きているとの思いがある。『遍照』所収。

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