山々の藍かさねたる秋思かな 直人
「秋思(しゅうし)」は秋の涼しさや寂しさに誘われて、心に深く物思いにふけること。張籍の漢詩など中国の古典に由来する、やや硬質で知的な孤独感をはらむ言葉。春のうららかな中で何となく気が塞(ふさ)ぐ「春愁」と対をなす。
掲句は、山国に住む作者の孤心を覗かせた作品。明け暮れ山々と対座しているような山住みの作者の目にも、秋は山々の藍色がいよいよ澄みまさってくる季節。その藍色の澄みに秋の深まりを覚え、自身の来し方行く末を思う。単明な句柄だが、捨てがたい味わいがある。『遍照』所収。