精霊を深追ひしたる黒揚羽 中尾公彦

一般的に「蝶」全般は春の季語だが、大型の「揚羽蝶」の仲間や「黒揚羽」は、暑い盛りに姿を現すことが多いので夏の季語とされている。中でも全身黒の「黒揚羽」は、どこか神秘的で、妖艶な雰囲気をまとっている。

掲句は「黒揚羽」のそうした雰囲気を浮かび上がらせた作品。「精霊」を〈せいれい〉と読む場合は、山、川、草木などの万物に宿る超自然的な魂のことであり、〈しょうりょう〉と読む場合は、亡くなった人の霊魂や先祖の魂を指す仏教由来の言葉となる。私は、「黒揚羽」が見え隠れする夏の盛りの深山の趣と解して、〈せいれい〉と読むことにしたい。緑滴るような自然の奥深さを感じさせてくれる。もちろん、〈しょうりょう〉と読んで、盆路や墓参の光景として味わうのも悪くない。『俳句四季』2026年9月号。


コメントを残す