廣瀬直人の俳句(60)

病人に逢はずに帰る盆の僧 直人

「盆」は旧暦7月13日から16日にかけて行われる先祖供養の行事。13日夕方先祖を迎えてお供え物をし、16日早朝に供物を川に流し先祖を送る。新暦で行う地方もある。「盆の僧」は「盆」の時期に檀家を回って棚経を読むなど、施餓鬼や仏事を行う僧侶のこと。

掲句は、家を訪れた「盆の僧」を詠んで、檀家と僧侶の関わりを浮かび上がらせた作品。家で看取っている「病人」は老父母だろうか、襖を隔てた別の間に寝かされているのだ。僧侶と「病人」とは、普段から親しく話しを交わす間柄なのだが、その日は逢わずに帰って行ったという。「病人」に対する僧侶の心遣いとも多忙さ故とも読めるが、事細かな説明をせずに、読者の想像に委ねた。省略が作品の味わいを深めている。昭和57年作。『朝の川』所収。

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