「初蟬(はつぜみ)」はその年初めて聞く蝉の声、又は初夏の頃に初めて鳴く蝉のこと。梅雨明け前後の蒸し暑い時期に、木立の中から聞こえてくる。本格的な夏の到来が目前に迫っている。
「初蟬」の声を聞きながら、自らの子育てをふり返っている作者。その時々に精一杯子と接してきたが、子が健やかに育って親から少しずつ離れていき、抱き上げることも無くなるというのは、子の成長の証だが、母の側から見れば一抹の淋しさや空虚感をともなうもの。この句は、誰もが感じる子育てにともなう淋しさを、平明に柔らかく詠んで、味わいがある。「や」の切れに、作者の来し方に対する感慨を感じ取りたい。『俳壇』2026年9月号。