「桜鯛」は桜の咲く頃に産卵のため内海や沿岸に集まる真鯛のこと。体色が桜色に染まることからこの名がある。産卵に向けて栄養を蓄えているため脂がのり、一年の中で最も美味になる時季でもある。
掲句は、鮮魚売り場の厨房で鯛を捌いているところを見かけての作品。日頃の私の密かな愉しみの一つは、鮮魚売り場で魚を見て回ること。といっても、三枚に卸されたりして切り身になっているものは、既に食材と化しているから趣に欠ける。生きていたときの姿のまま店先に並べられている魚がいい。見かけると、鮮度を吟味しながら暫く立ち止まる。時には奥の厨房で、俎板を水で洗い流しながらお兄さんが魚を捌いていることもある。令和8年作。